ご恵贈御礼『文系研究者になる』(石黒圭/研究社)
石黒圭さんより『文系研究者になる:「研究する人生」を歩むためのガイドブック』を頂きました。
例によって簡単な紹介と雑感です。
「研究する人生」の見取り図
いつもだと目次を書き出すのですが,今回は出版社のページへのリンクに留めます。
というのも,かなり細かく分かれているのです。これでかなり圧倒される人もいるんじゃないかと思いますが,石黒さんは研究する人生をすごろくに例えることで,全体を見通しています。
大学院生のキャリア形成についてはこの20年でかなりの情報が提供されるようになってきました。私は2000年に大学院へ入学しましたが,当時はこのような本はほぼなく,論文執筆やアイデアをまとめる,留学などといったことについては東郷雄二さんの本で学んだぐらいでした(余談ですが,この本で私はアウトラインエディタというものに出会ったことは大きかったと思います)。今は筑摩文庫から新版が出ているようですね。
「研究を止める」とき
石黒さんの本は研究する方法に関することだけでなく,キャリアの形成にも深く言及しています。特に「研究の中断」に1節を割いていることはとても重要だと思います。
どうしても研究界隈には「中断したら終わり」のようなムードが暗にも名にも流れてしまっています。個人で努力してそういった状況を打ち破る人もいるのですが,そのような研究の中断について真っ正面から語っている本はほとんど目にした覚えはありません。その意味でとても重要な本だと思います。
「新人」ばかりが対象ではない
上の「研究を止める」ときもそうなのですが,この本の大きな特徴は対象が「新人」(学部〜修士)に限られないところにあります。例えば,次の点を見て「ドキ」っとする人はいるんじゃないでしょうか。
上級生として,または指導教員としてどう振る舞えばいいのかなんて誰も教えてくれませんでした。もちろん「何でも教えればいいというものではない」ということだってひとつの正論だと思います。しかし,知っていることを伝達することで,より指導やアドバイスの質が高くなるのであれば,そこには一定の価値があるでしょう。
仕事の質を高めよう
最後に個人的に最もドキッとしたところです。
特に今年がひどいのですが,何か依頼されると基本的に引き受けてしまいます。そのときはどうにかなるだろうと思ったし,どうにかしてきました。しかし,若くなくなったのか,あと一歩の力が出なくなってきています。それを考えると,ぼちぼちキャパを考えて仕事を引き受けた方が良さそうですね。
というわけで,非常に簡単な紹介となりましたが,文系に限らず「研究する人生」を歩む全ての人にオススメする本です。