コトノオト

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研究へのたどりつき方ガイド(試作版)

北星の学生ってなかなかやるんですよ

勤務する北星学園大学には学生の自主的な活動に対してお金を出すしくみがいくつかあります。

cgw.hokusei.ac.jpこの助成に採用されると活動資金が出るのですが,その代わり年度末に活動内容を報告します。今日はその報告会がありました。

cgw.hokusei.ac.jp発表された3件の活動はどれもすばらしいもので,私自身が学部生だったときよりもよく勉強しているなあということがよく分かりました。だって,例えば学部生で国際会議に参加(聴講)するなんて僕のときには考えられませんでしたから。

研究までたどりつくと(もっと)よかった

さて,その中のひとつに「規格外野菜の廃棄を減らすための啓蒙」とでも言うべき取り組みがありました。これは実習授業の中で出てきた社会的な問題について自分たちで考えて取り組みを行ったもので,こういうことができる人を本当に尊敬します。

今回の発表会は匿名チャット(slido)を使って質問ができたのですが,私の方からは(匿名だったのだけど)「海外での規格外野菜の廃棄に対する取り組みはあるのか?」と関連して「規格外野菜を英語で何と呼ぶのか」という質問をしました。はい,これ,発表グループが2年生だったことを考えるととてもレベルが高いというか意地悪な質問です。意図を書くと,「規格外野菜が問題になっていることを農家での実習で知った」というところで,もう少し空間的な視野を広げてもいいよなあということがありました。それなら日本の他の地方について聞いてもよかったですね。

そんなわけでこれには「分からない」という回答でした(分からないときちんと言えることは良いことですよ)。ただ1年生にレポートの書き方を通じて研究入門的な所作とでも言うのかそんな科目を担当している身としてはもうちょっと自分の回りで生じた疑問を研究に繋げてほしいなあとは思います。でもそれってきちんと言語化して教えてないというのも否定できません(ごめん)。なので,そのざんげとともに,私だったらこうするということをメモ代わりに書いておきます。

Googleであたりを付ける

分からなければGoogleさんに聞くというのは基本としてあります。でも単に「規格外野菜」と検索しても,信用できるか分からない情報も含まれてしまいます。今回は英訳を知りたいのでGoogle翻訳を使う手があります。早速検索すると"non-standard vegetables"という訳語がヒットします。

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Google翻訳「規格外野菜」の結果

そして出てきた訳を今度は検索します(このとき" "で囲むとフレーズ検索といって,ひと固まりにして使ってるものだけヒットします)。すると,1320件ヒットしました。でも日本のサイトが最初に出てきており,ちょっといいのか疑問です。

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Google「non-standard vegetables」の結果

もう少し信頼性の高いものを探したいので,研究に関するものに絞り込みたいです。こういうときは2つやり方があります。1つは検索キーワードに research を足した上で site:.edu というのも入れます。こうするとキーワードに関する研究を大学や研究所(学術機関)のサイトからに限って探します。もちろん日本語でも「研究 site:ac.jp」を足せば同じことができます。そうしたところ,検索結果は2件でした。

 

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Google「"non-standard vegetables" research site:.edu」の結果

さすがにこれだとちょっと心許ないですよね。ここでもう1つの方法も使ってみます。それはGoogle Scholarで検索するというものです。Google Scholarは論文などの学術資料から検索するサービスです。これで同じように"non-standard vegetables"を検索すると9件ヒットしました。

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Google Scholar "non-standard vegetables"の検索結果

学術資料で9件というのは,個人的には結果としてかなり微妙に思います。つまり,最初のGoogle翻訳結果がちょっとあてにならないという判断でいいということになります。

そうしたら次にどうするかというと,素直にGoogle検索でキーワードに「英語」を付けて検索します。実はこれで検索してもGoogle翻訳を一緒に出してくれることが多いです。そうするとWeblioのような辞書ではimperfect vegetablesが使われていたり

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Google「規格外野菜 英語」の結果 その1

どなたかが解説しているページではodd bunch vegetablesという訳語がありました。

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Google「規格外野菜 英語」の結果 その2

以下ではodd bunch vegetablesを使っていきましょう。同じように research site:.eduを付けてみると,フレーズ検索は「なし」となるのですが,通常検索で6万件近くヒットします。

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Google 「odd bunch vegetables research site:.edu」の結果

最初にヒットしているのがacademia.eduという論文等をアーカイブできるサイト(研究者用SNSみたいなもの)ですし,2つ目には論文っぽいものがヒットします。

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Google 「odd bunch vegetables research site:.edu」の結果(論文がヒット)

論文を見てみる

論文にも信用できるものとそうでないものはありますが,一般的なサイトよりも信頼性は高いとみていいケースが多いので,これを使います。論文(ちなみに博士論文でした)のPDFを実際に開きます。

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odd bunch vegetablesの論文?

「なんだか難しそう」という気持ちをグッとこらえて下を見ていくとabstractというものが出てきます。これは論文の要旨(概要)を書いたものです。

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odd bunch vegetablesの論文の要旨(abstract)

もちろん英語が読める方はこれを読めばいいですし,そうでなければここでDeepLにコピペします(私も分野外なのでそうします)。

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Lee論文の要旨の訳

これを読むと,規格外野菜の消費促進のために提案がなされていることが分かります。これで一応海外の事情について少し情報を入れることができました。また,規格外の食品に対してugly foodという訳語がありそうだということも分かりました。

あとは例えば,ugly vegetables にするとか,usなど地域を足す,potatoのような具体性のある言葉を加えるなどキーワードを広げていくといいですね。

まとめ

こうやって検索技術を駆使して自分たちのキーワードの空間的・時間的な広がりを確かめてもらうと,調べたいことややろうとしていることのレベルがもう一段階上がると思います。まあもっともこれを学部2年生に求めるのは酷なのですが…でも期待したくなっちゃうんですよね,よい発表でしたから。

ちなみに,ある程度良さそうな論文を調べる方法はほとんど書いていません。特に日本語では紀要という審査なしで公開できる論文が多くヒットします。そのあたりを考慮する必要があるのですが,それについてはまた改めて紹介できたらと思います。