「地頭」っていつから使ってた?
この数年で「地頭(じあたま)の良いヤツには叶わない」とか聞くようになったのはいつだろうかと考えることがあります。調べてみると2007年に出版された『地頭力を鍛える: 問題解決に活かす「フェルミ推定」』という本が広がるきっかけとして大きかったようです。
地頭の意味に疑問
これは単なる私個人の感覚ですが,「地頭」って「鍛えられる」もんなんでしょうか。おそらく地力,地声,地毛のように「ありのまま」のような意味に馴染んでるせいで,「鍛える」とはコロケーションを作らないじゃないというのが頭をよぎります(地顔(素顔のこと)なんてのもあるんですね)。
ちなみにだいぶ前ですが,アンケートで「30歳になった人が地頭を鍛えて良くなるか聞いたところ,4割ぐらいは「ならない」と答えてます。
【直感で答えてアンケート】「地頭」は30代でも鍛えたら良くなりますか?
— まつーらとしお (@yearman) 2021年5月9日
とは言うもののここまで広がってるのだから「鍛えられるもの」としてもまあしゃあないですね。
で,さらに私としてはこの言葉がいつから広がったのかも気になるんで,それを調べてみました。ある言葉がいつから使われたのかを調べるなら『日本国語大辞典』を使います。この辞書は初出例を紹介しているのでとても便利です。でも「じあたま」で調べてもこのようなビジネス的なものはなく,「かつらなどのない状態の頭」が出てきます(あったのか!)。
このようにビジネス用語(っぽいもの)はなかなか語誌を辿るのも難しいところがありますが,大学のデータベースで調べられる限り調べてみました。
タイトルを探す
国立国会図書館サーチでタイトルに「地頭」を付けていた図書,雑誌を探したところ,雑誌記事でヒットした最も古いのは『プレジデント』の2004年の記事。
書籍だともう1年前までさかのぼることができました。
中島孝志 (2003)『地頭が強い人間は仕事ができる: 35歳までに必ずやっておくべきこと』小学館
想像していたより前でした。
本文を探す
当然のことながら,タイトルより先に本文で使われているでしょうから,それも探してみることに。大学と契約している日経BPの本文検索を利用すると,最も古いのは『日経ビジネス』1991年11月11日号の記事でした。
読むと2行下の「地声」と対比的に使われているようにも見えます。
新聞では日本経済新聞の2001年7月17日掲載のインタビューに登場しています。話し手はレインズインターナショナル社長の西山知義さんです。
” ”を付けていることからこの使い方がまだそこまで一般的なものではなかったことが伺えます。